第1回「会社の屋上の練習場で出会った」
ゴルフが僕の人生を変えた。
自分でゴルフを始める前にたったひとつだけ知っていたことと言えば、昭和32年のカナダカップ。霞ヶ関CCで開催されたんですが、中村寅吉さんと小野光一さんが優勝して、トロフィーを高々と持ち上げているのを雑誌かなんかで見て「身の丈よりも大きいモノ振り回しているなあ」というのが印象でした。
これがちょうど、私が神田の広瀬無線という会社に入社した頃でした。小さい時からラジオ少年で電気がすべての少年だったし、相撲大会とか走り競争とかスポーツ関係の時はいつもサボっていましたよ。だから基礎体力なんかない。今の時代だったらこれでプロになろうなんて無謀ですね。
そんな私がゴルフを知ったのは、会社の屋上にゴルフの練習場があると気付いた時だから、18歳か19歳の頃ですね。社長がゴルフ好きで練習場を造って、あの辺の秋葉原の電気屋の社長さんたちが練習に来ていたわけです。造ったはいいが、素人だけでやっていてもしょうがないというんで、名門ゴルフ場からコーチというかインストラクターが教えに来るようになりました。
この練習場で初めてクラブを振り回した時は見事な空振り。尻もちまでつきましたよ。それで頭にきてゴルフをやるようになった。だって、そこに止まっているボールに当たらないなんて悔しいでしょ。
小学生の時にラジオ作りにのめりこんだ時もそうだけど、やるなら徹底してやりたいところがあるんだと思います。それでゴルフにのめりこんだ。
でも、実はもっと別の理由もあるんです。これを言うのはちょっと恥ずかしいが、給料ですよ。当時、僕の月給は1万円にいかない。ところがインストラクターの給料が4万円。大卒の初任給が1万1千円か2千円の頃で、僕は高卒だからね。70台のスコアでインストラクターの資格が取れるから、これを目指すことにしたんです。
(次回に続く)